対談 春夏秋冬
県立広島大学 足立洋 × 博士(農業経済学) 岸保宏

今日は県立広島大学准教授の足立洋先生の研究室にお邪魔しています。

僕が今年度から会計学を大学で教えることになりまして、どういった内容を教えようかお聞きしに来たわけですけれども、続けてちょっと対談をやっちゃおうという無茶ぶりからスタートです。

今日はどうぞよろしくお願いいたします。

まず最初に聞いてみたいことがありまして、足立先生は何で大学の先生になられたんですか?

あんまりちゃんと整理したことはないんですが、いくつか理由はあって、一番大きいのは自分の世界に入るのが割と好きなんですよね。

自分の世界って?

今の仕事でいうと研究ですよね。1人でずっと文献を読んだりとか、あとは次に書く論文の筋書きを考えているときとか。なかなかアイデアが出なくて苦しいときもあるんですけど。それでも1人で自分の世界に入る時間が日常的にあるのは楽しかったりしますね。

わかるわかる。僕も何かひとつのことを没頭して考える時間ってけっこう好きで。
他の理由は?

やっぱりもともと教えるのは好きでしたね。

それはいいことですね。
会計以外のことも何か予備校とかで教えていたんですか?

自分の場合は塾で小学生に算数とか教えていましたね。

意外と小学生とかに教えるのって難しいような気がするけど?

そうですね。本当に言葉を優しくしないとダメなんですよね。

そこが今の仕事に生きてる可能性はあるよね。

そうですね。大学の仕事でも FD 研修とかいうのがあって、授業のやり方とか、教育メソッドとかについて研修を受けたり、もちろんそこで得ることもあります。

ただ、僕の場合は塾でのアルバイトが長かったので、そこで先輩の先生方から受けた指導とかは今でもノウハウ的に役に立っているようなところは多いかもしれないです。

なるほどね。なるべくして先生になったような感じかな。

そうだと思います。でも天職って何なのかなんてわかんないですけど。

なるほどそうだね。ちょっとがらっと内容変えますけど、足立先生から見て、岸保宏ってどんな人ですか?

大酒飲みとかじゃ駄目ですか?(笑)

昔は大酒飲んでたけど、今はもう嗜む程度で・・・

うーんでも常に何かを哲学している人?みたいな印象はあります。

求道って言ったらちょっとカッコいい言い方かもしれないけど、それはあると思う。

「抽象的なもの」に対する憧れみたいなのを強く持っている感じですよね?

抽象的なものへの憧れっていうか、答えのないものを追い求めるところはあるかな。

あとこれは僕も共感できるところでもあるんですけど、この世界には何があるんだろうっていうのを、常に探し求めているような気がします。岸保さんいつも口癖で「何か一つのところにいたくない」って言うじゃないですか。

普通、子供が出来たりして大人になるにつれて、守りに入ってくるじゃないですか。安定した職とか、安定した収入とか。だけども岸保さんは常に何か新しいもの探し求めてますよね。自分がまだ見えてないものは何だろう?って。

そういうところは確かにあるね。

それと「俺はもうここまでやったから何でもわかる」みたいなことを決して言わないのは偉いなと。
「人の認知の有限さ」と「世界の無限さ」みたいなものを認識しながら、「自分がまだ分からないことは何だろう?」って好奇心を持ちつつ、どんどん自分の世界を広げていくところは、かっこいいなと思います。

何かそこまで言ってくれるとなんかこうね、凄くありがたいんですけど

だってこれ持ち上げるために収録ですよね?(笑)

もちろんそうだよ(笑)
それで話はまた変わって、これからの足立先生てどういうふうな人生を考えてます?

まずこれは性格に起因するものなんですけど、死ぬまで何かをやってたいですね。

うんうん死ぬまでずっとね。

その形はずっと研究を通してになるかは分からないんですけどね。
ちょっと大それたことを言うと、僕は今会計の学者をさせてもらって、県立広島大学でお給料いただいて、ご飯を食べさせてもらっているんですけど、会計の研究を通して追求したいことって、「日本人って何なんだろう」ってことかもしれないです。

元々、あんまり自分がおべっかを使ったりとか上手なタイプじゃないし、世渡り上手ではないので。世渡り上手な人っていったいどう振舞ってるんだろうってことには結構関心があったんですよ。

・・・っていうところから始まって、会計をやりだした若い頃は会計学って計算の仕組みたいに思ってたんですけど、最近自分なりにいろいろと勉強していると結局、「数字っていう計算の道具」を使う「人」っていうのが計算の奥にあって、一つの計算結果でも、人によって受け止め方が違ったり、国によって受け止め方が違ったりするんじゃないかなって。

会計って組織を表現するためにあるものなので、必ずそのバックには当たり前ですけど人がいるんですよ。人がその数字に反応してあれやこれやするわけですよ。それで、その数字であれやこれや反応するときの日本人の反応っていうのは、何か特徴があるのかみたいな。

何か行動経済学とか心理学とかの分野的にも広がるかもしれないね。

もちろん行動経済学もあるんですけど、今のとこ考えてるのは、ちょっと歴史を調べてみたいなって思ってます。

やっぱり人って同じことを繰り返していくからね。

多分やってるうちに、行動経済学の分野にも当たらないといけないようなところも出てくるとは思うんですけど。

すごくミーハーな話なんですけど、ほらちょっと前に「永遠の0」って映画あったじゃないか。あれ見たときから「日本人って何なんだろう」っていう関心がすごく強くなってきたんですよ。

映画のワンシーンに「特攻隊に志願する者は前に出ろ!」って、みんな死にたくないのに前に出るシーンがあって、それで誰も「死ぬのが嫌だ」って言わないんですよね、前に出たら死んじゃうのにですよ?家族とも会いたいし子供の顔だって見たいのに前に出るわけですよ。

うんうん。

これっていわゆる空気を読むってやつだと思うんですけど、いったいどういうロジックなんだろうと思って。空気を読むっていう行為をみんながやると、人間の集団の中に圧力ができてルールになっていくわけですよ。

ひょっとしたら会計制度とか、僕は管理会計ですけども、管理会計の技法が導入されるというときにも、実はそういう日本人の行動パターンみたいなものが関わってて、日本企業で今使われているような管理会計の技法っていうのも、実は過去をたどっていけば、必ずしも経済合理的な理由ではないような、そういうロジックで導入されたり、開発されたものだったりするんじゃないかなって。

どういう資料を漁ったら情報が出てくるのかっていうのは、まだ模索中なんですが、次の研究テーマとしてそんなことができたらいいかなというのを思ってます。

じゃあまた続きを聞かせていただけるのが楽しみですね。

ちょっとプレッシャーですね、これブログに載るでしょう(笑)

そうだね(笑)本当に今日はどうもありがとうございました。

こちらこそ!ありがとうございました。

【対談者プロフィール】
足立洋(あだちひろし)
奈良県奈良市出身。県立広島大学地域創生学部准教授、博士(経済学)。
生年月日:1979年12月31日
血液型:B型
出身地:奈良県
趣味 :ドライブ