坑夫を読み直す

漱石はやはり面白い

漱石でもマイナーな小説である「坑夫」。なかなか忙しくて読み進められない。島崎藤村の「春』の予定が急遽、ピンチヒッター的にまわってきて、出された小説になるが、-自分が坑夫に就ての経験はこれだけである。そうしてみんな事実である。その証拠には小説になっていなんでも分る、と締めくくられており、ルポルタージュの方法をとっている。職業というもの、青年がなぜ坑夫に堕落したかという個人的な事情を青年の事実として、<過去>を物語ることで、<動機の解剖>という記憶や意識を、否が応でも読者が向き合うことを求めている。先ほど取り上げた結語が、夢から覚めたように読者に投げかけているのは、漱石のうまさというのを感じるところである。